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平成7年1月17日午前5時46分に発生しました兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)は全国で6400人をも越える犠牲者を出し、日本の近代都市が地震に対してきわめて脆弱であることを現実のものとして証明しました。
以降、都市防災に対しての備えをするに当たり、(社)日本技術士会近畿支部の会員を中心とした組織から、幅広く建築・土木・都市計画など都市防災に関連する研究者・技術者・実務者などによる新しい組織へ移行することが必要と考え、震災復興に多大なご尽力をされた当時の神戸市長の笹山幸俊氏からのご助言を踏まえ、有志により、平成16年に「NPO法人都市災害に備える技術者の会」を設立いたしました。
以降、笹山幸俊氏、世界的防災工学者の室崎益輝氏、継続的な草の根の防災活動に邁進中の伊藤東洋雄氏、京都市域などの歴史防災に造詣が深い山田信祐氏というメンバーが理事長という要職を務めてまいりました。
この度、行政での土木技術職員として防災・災害対応の経験しかない私(昭和32年生まれ)が理事長という要職に就くこととなりました。先輩諸氏はじめ地域の皆様、会員各位のお力添えを賜り、「被害を受ける前にできることは必ずある」を念頭におきながら、事前防災を軸に、広く地域の皆様とともにこの会が目的とする地道な活動を進めてまいりたいと考えております。とりわけ、研究者や行政と地域の皆様との橋渡し、埋もれた防災好事例の発掘と発信、他の同じ志を有される団体様との連携を進めてまいりたいと考えております。
さて、政府は、災害リスクの高い地域の開発抑制と安全な地域への居住誘導の必要性を初めて盛り込んだ令和7年版「防災白書」を閣議決定され、事前復興の観点で、津波リスクの高い低地から高台へ移住するなどの事例を念頭に置く施策を打ち出されました。この防災白書には「国民の防災意識の向上」とする項目を設定され、「一人一人が災害リスクを的確に認識し、危険な場所に住まないなど正しい知識・情報によって、災害リスクの低いライフスタイルを選択できるようにすること」という取り組みの必要性を明記されたところです。
国内では平成7年の兵庫県南部地震を契機に、活断層沿いの土地利用規制が議論されましたが、密集地や地価への影響が懸念され、制度化は見送られてきました。
一方で、近年はハザードマップの整備が進み、平成23年の東日本大震災を受け、全国で事前復興の考え方も浸透し、平成24年12月には、徳島県が活断層上の建設規制の条例「徳島県南海トラフへの巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例:愛称『命を守るとくしま−0(ゼロ)作戦条例』」を公布され、令和7年2月には、高知県黒潮町で南海トラフ地震に向けた高台移転計画「黒潮町事前復興まちづくり計画」が策定されるなど地域の取り組みが着々と進んでいるところです。
私たちNPOの役割は、このような行政の施策が着実に地域に根差していくべく、地域課題を掌握したうえで、深い技術的及び心理学的な考察や地域の方々の精力的な取り組みから学ばせていただき、自己研鑽を重ね、社会に情報を発信していくという地道な取り組みを進めてまいる所存です。
私たちのビジョンは、「あらゆる災害から、守ることができる命は守り抜く」です。
このビジョンのもと、地域の皆様とともに災害犠牲者を皆無にする活動を続けます。今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。
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