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3期の長きにわたり理事長として、ご尽力いただきました伊藤東洋雄氏の後任として(2020年)7月7日の総会・理事会においてご指名・ご承認を受け、就任しました山田信祐です。
図らずもこのような大役を仰せつかり、少なからずの緊張と責任の重大性を感じておりますが、理事の方々や会員の皆様方のお力添え、アイディアをいただきながら、これまでの歩みを踏まえつつ何事にも前向きな姿勢を持って「案」中模索していきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
就任にあたり改めてこれまでの理事長の歩みを振り返ってみました。
阪神・淡路大震災の経験と教訓を技術者の立場から後世に伝えていかなければならないとの強い思いをもって設立にご尽力された初代理事長笹山幸俊氏。
発展期を迎え、技術者間や技術者と社会との「つながり」ならびに産官学等の連携の輪を広げる核となる組織づくりを目指された第二代理事長室ア益輝氏。
会員がフットワーク軽く活動できる体制づくり移行への機運の高まる中、「地域や地域住民一人ひとりの声を大切にして市民目線に立った防災のあり方」を重要な視点に見据えられた室ア氏の思いを踏まえ、転換期を「草の根WG」の発足により見事に継承された第三代理事長伊藤東洋雄氏。
このように、黎明期、発展期そして転換期をリードされてきた理事長の皆様のご功績に改めて深く敬意を表したいと思います。
ではその後任として私は何を目標にしていこうかと、これまでを振り返り、考えたことをお話したいと思います。
キーワードは「発信」です。
私自身、このNPOに発足当初から参加させていただき、この間阪神・淡路大震災を実体験された方の生々しいお話や東日本大震災をはじめ様々な災害への対応、対策、技術的な検討等、普段聞くことのできないお話を聞く機会を得、刺激をいただき、自らの動機づけにつなげてきました。
その中で常々感じますのは、このような貴重な話を防災に関心のある方をはじめ、もっと多くの人に知ってもらいたい、共有したいとの強い思いです。その先には様々なパートナーとのにつながりが生まれ、防災・減災の取組が進むのではないかと。
まさに「もったいない」問題です。
その解決の一つとして
@住民(団体)への発信
A自治体への発信
B社会への発信
が必要ではないかと考えています。
@とAは伊藤理事長時代に「草の根」活動として様々な地域、自治体を対象に進められてきた取組を継承するとともに、より多くの住民、自治体への拡大を目指し、マーケティングにも力を注ぎたいと考えています。
その際、地区防災計画制度の考え方は大きなツールになると思います。
Bは内容によっては十分な議論が必要ですが、発信という点で、これからの柱になればと期待している取組です。「住民一人ひとり」の為に、その延長線上に「社会貢献」を見据え、NPOという立場を利用して発信できること、特に技術者として本質的なことを発信できることがある様に思います。
またその時には、理解のあるマスコミとの連携、協働ができれば最高です。
話は変わりますが、昨年の西日本豪雨災害を受けて「自分の命は自分で守る」ということをよく耳にするようになりました。
公助の限界が言われだしたころ、自治体職員として声高にこのことを発言するのは躊躇しましたが、今は行政が正直に、積極的に限界を叫ばないと自助、共助の意識向上は難しいと考えるようになりました。
このことを象徴する出来事が、九州地方の大規模水害発生予想に備え、7月2日に気象庁が行った、緊急記者会見にあると感じました。
主任予報官が「自分の命は自分で守らなければならない状況が迫っていることを認識し、早め早めの避難を心掛けてほしい」と呼びかけましたが、これは九州地区だけでなく広く国民に発信されたメッセージと受けとめ、この言葉をリアルタイムで聞いたとき、鳥肌が立ちました。
国の行政機関が、ここまで言うかと。
災害対策基本法では「・・・国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することに鑑み・・・」と国の責務を明記していますが、自分の命を守るのは自らの責務と発信したのですから、大げさではなく歴史的会見と私は感じています。自助への意識改革をうながす勇気ある発言に心から拍手を送りたいと思います。
腰が重いと言われる行政のこのような動きを見た時、フットワークの軽いはずのNPOなら、内容は違えども技術者としてみた現状の課題を社会に発信できるものがあるのではないかと感じた次第です。
たとえば西日本豪雨災害のあと導入された「警戒レベル」の解釈や理解が不十分と言われるハザードマップの利活用など、行政と住民の間にある意識、認識のギャップ問題はたくさんあると思います。これを埋めるのは、まさに行政と住民をつなぐNPOの出番です。
一つ一つのテーマは重要で重いものばかりですが、住民が疑問に感じていることを把握し、分かりやすく伝える。そんな流れができればNPOの活動も広がるのではないかと考えています。
あまり欲張りすぎると消化不良になるかもしれませんので身の丈に合った、少しだけ背伸びしながら皆さんとともにこれから始まる、始まっている令和の時代の災害に付き合っていきたいと思います。
浅学菲才な身ですが、忌憚のご意見とお力添えをいただき、同志の皆さんと一緒に歩んで行きたいと思います。
よろしくしくお願いいたします。 |