2004.5.6 呉市西谷地区自治会との現地調査と助言
平成16年5月6日(日)12:00〜20:00
場所:広島県呉市内の斜面

NPO法人『都市災害に備える技術者の会』から次のメンバーが参加しました。
太田英将(理事)、國眼 定(会員)、手嶋氏(非会員)
  

 呉市は、戦前〜戦後にかけて軍港として栄え、人口集中により都市化が大きく進みました。呉市は瀬戸内海に面する
反面、三方を山に囲まれているため、都市化は山間部へと進行していきました。
 昭和42年には西日本大水害を受け、斜面崩壊や土石流が頻発し、「急傾斜地法」制定の契機となった場所でも有名
です。この後、現在までの30余年にかけて数え切れないほどの災害に見舞われてきました。
 このように、都市における土砂災害の代名詞として呉市は位置づけられています。
 呉市の山間部にある西谷町に住む人たちは、自治会単位で自主防災組織をつくり、「自分たちの家はできるだけ自分
たちで守る」という精神で活動されています。
 今回、呉市西谷町の自治会の要請を受け、NPO都市災害に備える技術者の会より、上記2名が土砂災害に関する専
門技術者として現地を視察し、助言を行いましたのでその概要を報告します。

@西谷地区の県道沿いの崖と大規模な盛土が不安定になっていました。
@西谷地区にある県道沿いには写真のようにむきだしとなった崖があります。住民は、この県道の下に居住しており、豪雨時にはいつもヒヤヒヤさせられている、とのことです。また、写真の右手には沢沿いに30年前に作られた大規模な盛土地があり、これまでには盛土地から流出した土砂が、県道下の暗渠を流れ下ることが多いので、今後の豪雨時に盛土が流れ出さないか、とても心配で困っている、とのことです。
A盛土地の現地調査を終えて住民の方々へ説明する太田理事
B盛土の末端部では擁壁や水路などの構造物が破損し、機能を発揮していません。 C県道の下には幅2m高さ2mの横断函渠がありますが、流木や土砂で閉塞されるとダムアップする危険性が高いものとなっています。この下には人家が密集しています。
D盛土の末端部に長さ1mくらいの鉄棒(土層検査棒といいます)を指すと →→→→→ Eこのように簡単にめり込んでしまいます。これくらい盛土末端部の土はスカスカになっていて、大変危険です。
F盛土地上部にある水路は土砂で埋まってしまっており、亀裂から漏水も見られ、水路の役目を果たしていません。 G盛土地上部の斜面の肩にはこのような崩壊跡が見られます。
H天気は晴れていても、盛土地内ではこのようにたくさんの水が流れています。この水路の上流へ行ってみました。すると。。。→→→→→→ I盛土地のさらに上部にある県道の側溝からたくさんの水が垂れ流しとなっていることがわかりました。きちんとした流末処理はされず、この水は盛土内に流入しています。
J道路の側溝をさらに追いかけてみました。すると。。
→→→→→
K道路の上流側500mの間では側溝からどこにも水を排水していないことがわかりました。すなわち別の山に降った雨も道路の側溝を伝ってこの盛土地に入ってくることになってしまいます。
以上の現地調査を終え、現在の危険度の評価と、対応策について自治会の方々に助言を行いました。
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A大雨のときとても危険な斜面が無対策のままになっていました。
@二つの急傾斜地崩壊危険区域に挟まれる人家(写真左端)では、大雨のときに谷筋から水が流入し、危険な状態にあります。住人はこの危険性を感じています。しかし、行政側は「斜面勾配が30゜ないので急傾斜地対策として扱えない」ということだそうです。
A住民から不安と不満の声を聞き、助言する國眼会員 B竹藪の向こう側では急傾斜地対策工事が行われているのに、どうして自分のところだけ対策工事をしてくれないのか、と住民は困っています。
現地調査の結果と対応策

急傾斜地崩壊対策事業の採択の基準を説明し、当該地区は十分その適用を受けることが可能であると助言を行いました。また、危険区域の設定に関する資料を後日自治会に送付することとしました。。

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