谷埋め盛土宅地の地震時危険度自己診断 | |||||
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※あくまでも目安としてご利用下さい ※大規模盛土造成地の耐震化対策の政府広報 |
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Step 1 :盛土か切土か | |||||
まず、対象の宅地が「盛土」か「切土」かを判定しましょう ・不動産屋さんに造成図面を見せてもらう ・造成前の地形図と造成後の地形図を比べてみましょう(例) ・造成前の空中写真と造成後の空中写真を比べてみましょう |
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Step 2 :盛土の形は? | |||||
盛土の横断方向の幅Wと、元々の谷の一番深いところといまの地表面の差、すなわち盛土の厚さDを読み取りましょう。 次に、元々の谷の中心部の傾斜角を測ります。等高線の間の距離dと等高線の高さの差hがわかれば、tanθ=h/dですから、関数電卓ならθ=arctan(h/d)で計算できます。エクセルなら、=ATAN(h/d)*180/PI()です・・・hとdにはそれぞれデータの入っているセルを指定します。*180/PI()はラジアン単位を度の単位に変換するおまじないです。 |
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Step 3 :簡易判定 | |||||
『斜面防災都市』(釜井・守随)に書かれている数量化二類の手法で判定を行います。最新の判定方法は別にありますが、断層からの距離などのパラメータを入力する必要があるため専門家向けです。 下記のエクセルシートでは「1995年兵庫県南部地震並み」の直下型地震(震度6弱以上)の丘陵地盛土に適用できます。なお、溜池を埋めた盛土の場合には、この判定の如何を問わず、何らかの対策をしてください。兵庫県南部地震ではほぼ100%何らかの変動が発生しています。 【簡易判定エクセルシート】 このエクセルシートに入力するデータは、(1)盛土の幅・(2)盛土の厚さ・(3)基盤傾斜角(谷の傾斜角)・(4)造成年代(わからなければ1974年以前を選択)・(5)地下水有無(谷を埋めているのでとりあえず、地下水多いを選択します)の5種類です。 なお、海溝型の長周期地震に関しては、まだ国内に被災データとして整備されたものがありませんので未解明です。ただ、直下型地震より影響が大きい可能性があると考えられていますので、より安全側でものごとを考えた方が良いかもしれません。 |
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Step 4 :近所の人と相談して行政に調査を頼んでみましょう | |||||
自分の宅地および周辺宅地に対して不安を感じたら、住民側から宅地造成等規制法を担当している部署に行って「危なそうなので調査をしてみてください」とお願いしてみてください。法律で宅地の耐震化促進をすることになっていますので、相談に乗ってくれるはずです。しかし、行政の方にお願いするといっても、本来これは住民の方々が主体で行う事業です。主体は自分たち市民だということをしっかりと意識しておいてください。 | |||||
Step 5 :事業化されたあと | |||||
まだ正式には決まっていませんが、おおよそ次のようになると思われます。 1.第一次スクリーニング(抽出作業) これで、造成宅地防災区域の指定基準を満たしていると判定されると、現地調査計画が立案されます。 2.第二次スクリーニング(現地調査・判定) 現地調査(地質調査など)が行われ、安定度評価が行われます 3.防災区域指定 相当数の居住者あるいは他の者に危害を及ぼす恐れが高いと判断されると、防災区域の指定が行われます(自分の宅地のみが被害を受けるものが対象でないことに注意してください)。 4.対策工の施工 宅地耐震化推進事業による補助制度(国と地方公共団体で1/2を支援)を活用することで滑動崩落防止工事の実施を促進し、宅地の耐震性向上を図ります。 |
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Step 6 :対策されたあと | |||||
人工的な盛土に人工的な対策工を施工して地震時の危険性を回避するのですから、その人工物の維持管理が重要になります。 将来の維持管理まで十分に見越した最初の地元チーム作りを心がけてください。 |
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その他注意事項 | |||||
1.宅地盛土の地震時被害は谷埋め盛土の滑動崩落だけではありません 宅地盛土の被害には、上記で示した「滑動崩落現象」以外にも、切土・盛土境界付近の不同沈下や、盛土地盤の締め固め不足によって変形が生じるなど、様々なことがあります。今回の法律改正では「相当数の居住者、公共施設等へ被害をもたらすおそれ等」がある場合を「造成宅地防災区域」の指定要件としていますので、すべての宅地盛土災害に対応しているわけではありません。他者への被害が及ぶ場合に限られていますので、自分の宅地内でおさまる被害に関しては、自助で改善する必要があります。解決策としては、滑動崩落現象の対策が、同時にその他の現象に対しての対策にもなるように智恵を使って工夫するということがあります。 2.盛土の地震時被害には、まだ未解明のことが多々あります 阪神大震災のような、直下型地震に関しての解明が進んだため、今回の法律改正に至りました。しかし、大地震は頻繁にあるものではなありません。データ量が今後蓄積されるに従ってより詳しくわかるものと思われますが、減災の観点から「阪神大震災規模」に対しては対策を講じるという判断がされたものと思われます。東海・東南海・南海地震のような海溝型地震に関しては、長周期の波が来ると予測されていますが、この長周期地震と宅地谷埋め盛土の被害の関係はまだまだ未解明です。 |
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(参考資料) 1.講習会資料「あなたの宅地は大丈夫か−地震による谷埋め盛土造成地被害事例と安全性調査方法−」 (動画部) 2.谷埋め盛土の地震時における被害写真 3.参考図書「知っておきたい斜面のはなしQ&A―斜面と暮らす」土木学会斜面工学研究小委員会 例)住民からの相談はどこにしますか 4.『斜面防災都市』:宅地谷埋め盛土の地震時被害について一般市民向けに詳しく書かれた唯一の書籍です。 5.「兵庫県南部地震で実証された造成地盤の危険性」:滑動崩落現象ではなく、切土盛土境部の不同沈下についての資料です |
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(国土地理院) 1.土地条件図:都市部の盛土の分布が大まかにわかります 2.空中写真閲覧サービス:造成前の写真があれば役に立ちます 3.地図閲覧サービス:新しい時代の2万5000分の1地形図です 4.旧版地図の閲覧・旧版地図の謄本交付 |
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総合的な宅地防災対策の経緯 | |||||
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